撮影:表恒匡
作品群”JIN JIYAN AZADÎ 女性、命、自由”について
2022/2025
私は、日本の婚姻制度や女性の地位に対する問題に関心を持っています。日本は、ジェンダーギャップ指数で他のアジア諸国よ りも低い位置にあります。しかしながら、この指標自体が欧米中心の価値観に基づいたものであり、東洋における男女平等の実感 とは異なる部分もあるのではないでしょうか。 これに疑問を持った私は2022 年6 月にジェンダーギャップ指数の下位に位置するイランへと向かいました。
イランでは、首都テヘランと古都イスファハンの2 都市でホームステイをし、通訳を通じて現地の女性たちと交流を深めました。 そこで私が驚いたのは、女性たちの強い結束力でした。イスファハンでは親族の女性たちが一緒に暮らしており、私を歓迎するた めに近隣の女性たちが集まり、前日から料理の準備をしてくれるなど、女性同士のネットワークの豊かさを感じました。また、女性 たちは互いの誕生日に家に集まり、ヒジャブを外して着飾り、夜遅くまでホームパーティーを楽しむこともあると知り、驚きました。
イランに行く前は、ヒジャブの着用が抑圧的で、ファッションの自由がないと考えていましたが、実際に着用してみると、外見の 美醜に左右されず、ひとりの女性として平等に扱われる喜びを感じました。また、バスや電車などの公共交通機関が男女別に分か れているため、痴漢行為が起こりにくく、安心して移動できる点も印象的でした。
この経験を通じて、私は中東地域に対して誤解していたことに気づきました。そして、イランの女性たちを一方的に「かわいそう な人たち」と見なすことが、実は差別的な行為であることに気づくようになりました。
それでも、2022 年にはヒジャブの不適切な着用を理由に道徳警察に逮捕された女性が死亡し、その抗議活動が政府の残忍な 弾圧によって鎮圧されるなど、女性の人権が軽視される現実が存在することも事実です。
作品群「JIN, JIYAN, AZADÎ」(女性、命、自由)は、イランで行われた抗議デモで掲げられたスローガンから引用しています。
私は今も、東洋における男女平等や女性の自由がどのようなものであるか、その答えを見つけることができていません。しかし、 このような疑問を作品として表現することによって、問題を少しずつ解体し、答えを見つける手がかりにしたいと考えています。