女性は罪を贖うために死ぬ
《写真 7 点》297×420mm
《テキスト 7 点》A4 サイズ
2022
フォトパネル・用紙
私は近年、世界における女性の地位に関する問題に関心を寄せています。毎年発表されるジェンダー・ギャップ指数のランキングは、西洋的な価値観に基づいて評価されているのではないかという疑問を抱き、2022年にはランキング下位で渡航可能な国であるイランを訪れ、現地の女性たちへのリサーチを行いました。
本作品は、「名誉に基づく暴力」、特に「名誉殺人」をテーマとしています。これは、女性の行動が家族や共同体に不名誉をもたらすと見なされた際に、その名誉を回復する手段として行われる暴力です。日本でも関連する事件が報道されており、多くは、些細な行動を理由に女性が親族に殺害されるという内容です。こうした報道は、中東やイスラム文化に対する誤ったステレオタイプを助長する危険性をはらんでいます。
同時に、このような暴力を「他国の文化的問題」として切り離すのではなく、私たちの社会における女性への規範や抑圧と連続する問題として捉える視点が求められます。
本作では、「イスラム版バービー」とも呼ばれる人形「フッラ(Fulla)」を用いて、名誉殺人の場面を再現しました。一見すると明るい光景の中に、実際の暴力の事例とその解説を添えることで、個別の暴力を可視化し、「女性と暴力」の問題を私たち自身の問題として捉えるきっかけを提示します。
Case Pakistan -1 “Qandeel Baloch”
彼女の名前は、カンディール・バローチ(Qandeel Baloch)。パキスタンでモデル活動をしていた女性である。彼女は、SNSで数十万人のフォロワーを持つパキスタン初のソーシャルメディアスターであった。
SNS上でサリーを纏わず、自身の女性性をアピールする写真を公開する彼女に対し、宗教的保守派から批判的なコメントが多かったが、彼女はそれに屈さず、「私は、誤った信念や古い慣習の殻から抜け出したくない人々の典型的で正統な考え方を変えようとしています。」「社会に支配されている女性たちにインスピレーションを与えていく。」と発言し、その後も挑発的な写真やビデオを投稿し続けていた。批判に屈しない彼女の姿は、パキスタンの女性たちに大きな影響を与えた。
しかし、彼女は26歳という若さでこの世を去ることとなる。彼女のSNSでの活動を良く思っていなかった彼女の実兄のムハンマド・アシームによって首を絞められ、殺害されたのである。
アシームは、妹を殺害した理由について問われると、このように語った。「いかがわしい動画を投稿していたので、家族の名誉のために殺害した。」「彼女は私たち(家族)の生活を非常に困難にし、他の解決策がなかった。」
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