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わたし と われわれ の間で
わたしとわれわれの間で
Between Me and Us two-channel video installation
2026
Video 1: closed-ended questions 19'25"Video 2: open-ended questions 29’51”
Video 3: open-ended questions 2’56"
本作は、とある国家の兵士として国境警備の任務にあたった経験をもつ2名の知人への心理学的質問、インタビュー、基礎訓練の再演という、3つの要素から構成された映像作品です。
制作のきっかけは、2016年、とある国で展覧会の通訳として知り合った友人Chrisとの会話でした。彼は国境の現実と、そこで生じる個人の感情について率直に語ってくれました。さらに彼は兵役を終えた後、かつて任務を全うした国境の向こう側の国へ移住します。
しかし、兵役義務のない国に生まれ育った私にとって、彼の心情は理解しがたいものでした。彼の話に強い関心を持った私は、当時インタビューを打診しますが、軍の機密に関わるため応じられないという返答を受けました。
それ以降現在に至るまで、私は彼やその国のさまざまな人々との関係を続けながら、「境界」にまつわる制作を行ってきました。しかし近年、ウクライナやガザの状況、日本における排外主義の高まり、軍事的緊張の増大を目の当たりにするなかで、彼の話を思い出すことが増えました。あのとき感じた「理解しがたさ」に向き合い、彼に再び話を聞くことが、現在の自分にとって最も切実なリアリティであると感じたからです。
また同時期に、制作の過程で知り合ったYoonさんが、Chrisと同じく国境付近で長年兵役に従事し、その後国境を越えて移住していることを知りました。Yoonさんはある島で家族と暮らしながら、国境をテーマとした作品制作を行っています。母国と移住先のあいだにある境界を扱うことは軋轢を生むことも少なくなく、彼はその現実と向き合いながら生活と制作を続けていました。
私は、国境の緊張や恐怖を経験してきたこの2名に出演を依頼しました。語りにくいことも含めて話してほしいという条件のもと、もう一人の出演者がいることを前提に、Chrisは出演を承諾してくれました。
本作を出品した展覧会の制作過程では、他の出品作家や企画者との議論のなかで、「互いに理解しきれない状態のまま、いかに共存できるか」という可能性についても話し合われました。しかし私は、それでもなお目の前にいる彼らを知りたい、理解したいという欲求――ある種のエゴ――を手放しきれずにいます。
その是非はさておき、他者を非人間化し、「理解しがたい存在」として位置づけることが、差別や暴力性を増幅させることも知られています。本作は、同じテーブルにつき、語り始めることそのものを出発点であり、同時にひとつの到達点として制作されたものです。
撮影の過程で、ChrisとYoonさんの内面から立ち上がる言葉に、私は驚きとともに多くの思いを受け取りました。インタビューのなかで語られた「他国を理解しないことも利益になりうる」という言葉には、そもそも理解し合えないという前提が存在しています。また、「社会は弱いものを淘汰する構造にある。だからこそ母国は強くならなければならない」といった、武力に関わる発言もありました。
それらの言葉は、兵役を経験し、さらに他国へ移住した彼らだからこそ語り得るものだと受け止めつつも、私は強い葛藤を覚えました。というのも、現実に武力によって引き起こされている近年の出来事を、どうしても肯定することができなかったからです。
こうして、私が向き合おうとした「理解しがたさ」は、より鮮明なものとして立ち現れます。兵役義務のない社会で生きてきた日本人女性としての自らの立場が、彼らのリアリティとのあいだに大きな隔たりを生んでいることも明らかになりました。
一方で、彼らが自らの経験を語ることを選んだ態度は、兵役や移住の経験を語り直し、新たな意味を付与する行為でもあります。そこには、何らかの「抵抗」の兆しが含まれているのではないかと感じています。
撮影:Yuki Moriya

























